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クールジャパンがマレーシアで失敗した理由

ツバキモトグループCEOの椿本です。
マレーシアのクールジャパンが失敗していると話題になってから2年半が経過しました。
その後、共同出資会社の伊勢丹がCJ(クールジャパン)機構から株式を買い取って再建するという方向性になっていましたが、私の見る限りでは店舗の集客力は改善していません。
その理由を私なりに考えてみましたので、共有したいと思います。
まずは、2年半前の以下の記事をご確認ください。
https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20180607-00085979

2年半以上経過し、運営会社の資本や役員構成の変更などもありましたが、記事にある商品、売り場、接客、客入りはほぼ全て当時と同じ状況です。
特に変わった様子はありません。
では、この記事の指摘が全て正しいかと言えば、それも私の見解とは異なります。
改善すべき点は、商品(価格も含む)ではなく、売り場と接客です。
この記事が一つ大きな事実誤認をしている点は、店舗にある商品の価格はマレーシアの人達からすると決して高くないということです。
マレーシアには富裕層(年収400万円以上)が人口の2割(約640万人)も存在し、東南アジアの中で最も富裕層が多いのがマレーシアです。
また、首都クアラルンプールの1人あたりGDPはすでに3万ドルに達しています。
クアラルンプールの人口は180万人ですので、日本の主要都市並みに成長しています。
相続税、贈与税、キャピタルゲイン税、住民税がありません。
そして、所得税や固定資産税も日本と比較すると低く設定されています。
人口も経済も伸びている成長国であり、平均年齢も30歳未満と非常に若いので、貯蓄への意識も低い。
マレーシアは、路上を素足で歩く人とフェラーリを色違いで持つ人が共存するダイバーシティーですので、日本のような一億総中流の国とはそもそも物価感覚が異なります。
日本の商品は現地のアッパーミドルから富裕層の人達から商品の価値からすると決して高くないと評価されており、この程度の価格であれば問題なくマレーシアで通用します。
平均年収だけで判断した結果、市場性を読み違えたという日本企業にも多く見受けられるミスだと思います。
マレーシアの市場性については、以下の記事で詳しく説明しています。

私は、伊勢丹の商品の選定基準は悪くないと思います。
改善すべき問題は、接客と売り場です。

マレーシアにMori Kohiという日本のカフェをコンセプトにしたローカル企業のカフェがあります。
緑豊かな場所で日本のカフェメニューを提供しており、連日大盛況です。

このカフェにmidorieというトヨタとサントリーが共同で展開している観葉植物のブランドが併設されているのですが、価格がRM2,000(5万円)以上する観葉植物に顧客が殺到しています。

実は、このmidorieの観葉植物は伊勢丹でも販売されていますが、私は来店客を見たことがありません。

ロケーションは伊勢丹の方が圧倒的に良いですが、Mori Kohiの「緑の中にある日本スタイルのカフェ」というコンセプトが緑化を進めるmidorieのコンセプトと一致して、それぞれのエリアが相乗効果を発揮していました。
また、社長を含めて日本に理解のあるスタッフを3名揃えており、商品説明も日本の文化や地理などを盛り込んで組み立てています。
一方で、伊勢丹はどうか。
売り場はただ商品を並べているだけで、スタッフに日本に対する想いや商品知識はなく、私には商品の価値が全く伝わりませんでした。
これはmidorieの売り場だけでなく、例えば日本酒や焼酎の売り場でも商品をただ並べているだけで、スタッフに商品の特徴や飲み方を聞いても返答できないという状況です。
日本の商品を購入する顧客は、その商品の背景にある歴史や製造過程や原材料や接客応対も含めて価値と捉えて購入します。
伊勢丹がこの点を踏まえて売り場作りとスタッフ教育を再度進めれば状況は改善すると思います。

本日は、売り場と接客を変えれば日本の商品はさらに売れるという話をしました。
例えば、サントリーのウイスキーダイニングのWWW.W(フォーダブリュー)や伊右衛門カフェのように、店舗を活用することでブランディングやプロモーションを強化し、物販との相乗効果につなげる手法は日本では珍しくありません。
このような手法は、日本の商品や業態の模倣が多く、本物の日本ブランドを求めているマレーシア市場に対して非常に有効だと思います。

Tsubakimoto Group Inc.
CEO 椿本 健太
https://tsubakimotogroup.com/

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