ツバキモトグループCEOの椿本健太です。
以前、ユニクロが世界で成功した理由を私の視点でお伝えしましたが、本日はドンキホーテがグローバル展開に成功した理由を分析してみます。
ユニクロについての記事は、以下をご確認ください。
ドンキホーテの海外売上はすでに1千億円を超えており、全体売上の10%弱にまで成長しています。
今後はさらに海外進出を加速し、2030年には海外売上を全体の30%にあたる1兆円にまで引き上げる計画を掲げています。
私の拠点であるマレーシアにも今年の3月に1号店がオープンしましたが、オープン日から連日1時間以上の待ちが発生するほどの大行列でした。(今も週末は大行列です)
なぜ、ドンキホーテのグローバル展開は成功したのか。
私が考える成功要因は以下の3点です。
①日本と海外の双方にある問題を解決する素晴らしいビジョン
ドンキホーテの安田創業会長は、日本の食品には大きなニーズがあるにも関わらず移住先のシンガポールでは2倍〜4倍の値段で販売されていることに義憤に駆られたと仰っています。
一方で、日本は世界一のレッドオーシャンで、デフレが常態化し、消費者は口が肥え、少子高齢化で胃袋は縮むばかりのいわば勝者なき市場だと日本の現状と将来に対して強い危機感を持たれています。
その上で、「世界に日本食の流通革命を起こす。日本の食品を適正価格で販売する。海外で日本の食品はいくらでも売れる。生産者も流通業者もオールハッピーという状況を作り出すことができる」と明確なビジョンを示されました。
この日本と海外の双方ある問題を解決するビジョンが海外進出の成功要因の1点目と考えています。
以下の記事に安田創業会長のビジョンが記載されていますので、ぜひ一度ご確認ください。
https://www.bcnretail.com/market/detail/20201023_196587.html
②創業者である安田創業会長の陣頭指揮
現在のドンキホーテの海外事業の担当は、創業者である安田創業会長です。
安田創業会長は2015年に会長兼CEOを退任されましたが、海外事業の加速に伴って取締役に復帰されました。
一度退任した創業者が取締役に復帰して、移住先のシンガポール(海外)から海外事業を指揮する。
これだけ社内に影響力のある方が新事業に踏み込めば会社もまとまります。
結果、海外事業が本格化する過程で、社名を株式会社ドン・キホーテから株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスに変更されています。
ドン・キホーテの名前を捨てて、環太平洋を意味するパン・パシフィックへの変更は、会社の海外事業への大きな決意を感じます。
新たなビジョンに対する社内の一体感は、新事業を立ち上げる上で必要不可欠です。
それを可能にしたのが今回の海外事業を「最後の社会的使命」とまで仰った創業者の安田創業会長の再登板だったのではないかと思います。
③市場特性に合わせた事業の徹底的なローカライズ
上記の通り、ドンキホーテの海外事業の担当はシンガポールに移住している創業者の安田創業会長です。
そのため、近年は東南アジアへの出店が加速しています。
東南アジアでの展開では、まず業態コンセプトをメイドインジャパンもしくは日本市場向けの商品でラインナップする”ジャパンブランド・スペシャリティストア”と再設定し、ブランド名も「DON DON DONKI」に変更。日本のドンキホーテの成功要因である迷路のような店内で、高密度に積み上げられた商品、遊び心のあるPOPなどといった買い物のエンタテイメント性を残しつつ、商品構成比の8割が食品と商品ラインナップは大きく変更しています。(日本の店舗は約30%)
マレーシアでは60%以上を占めるイスラム教徒の顧客を見据えて、「ハラール認証」を受けた商品のほか、ノンポーク・ノンアルコール商品も多くありました。
また、マレーシアは外食文化ということもあって、店内キッチンを設置して日本食の惣菜商品を充実させています。
そして、ドンキホーテの海外進出のビジョンは日本産食料品を適正価格で輸出し、海外の消費者と日本の生産者や流通業者にとってオールハッピーな状況を作り出すことにあります。
そのため、ハーモニープライスという中間流通業者の馴れ合いによって日本の商品が高価格に設定されている状況を打破し、ドンキホーテの海外事業会社が調達から手掛けることで日本産食品をそれまでの現地小売店価格の半値ほどで販売することに成功しています。
また、昨年には日本産品輸出を増やすことを目的とした会員制組織「Pan Pacific International Club(PPIC、通称:ピック)」を発足させて、この独自調達の機能を強化しています。
このように、市場特性に合わせて事業を徹底的にローカライズしている点が成功要因の3点目です。
ユニクロとドンキホーテは業種や業態が異なりますが、海外進出時のプロセスは同じです。
まず、企業のトップが新たなビジョンと戦略を示す。
次に、強い権限を持った企業のトップ主導で海外事業を進める。
最後に、ローカライズを徹底的に行う。
この3点です。
当社にご相談いただく企業の大多数は、残念ながら逆の考え方をされています。
ビジョンのない海外進出、海外事業を社内の担当者主導で任せる、工夫のないオペレーションや店舗作り。
今回と以前の「ユニクロから学ぶ海外進出に成功する方法」の記事を読んでいただいた方は、これではうまくいかないということがご理解いただけたのではないでしょうか。
多くの特に中小企業では国内での競争に手一杯という状況は理解できますが、そのような状況でも覚悟を持ってグローバル展開をすぐに進めなければ数年後にはさらに厳しい状況になっているはずです。
内需が急速に縮小しているわけですから、当然企業の数も減っていきます。
当社は、日本最成長のためにユニクロやドンキホーテのようなマレーシアで成功する企業を100社、200社と輩出していきたいと思っておりますので、自社だけで上記3点を進めることが難しい場合はぜひご相談ください。
私は、日本ブランドのマレーシアでの成功に大きな自信を持っています。
Tsubakimoto Group Inc.
CEO 椿本 健太
https://tsubakimotogroup.com/